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那岐誕生日SS その2です。

後日SSページにちゃんと格納するので、読みにくいですが後半をこちらに先行アップします。
誤字脱字は目をつむって下さい(汗)


行く先も告げないまま忍人は天鳥船の廊下を、那岐の手を離さず歩き続けていた。
「どこまで行くのさ」
「俺の部屋だ」
「部屋!? なんで?」
てっきり途中で手を離して「後は部屋に大人しく戻っていろ」などと言われ、解放されるものだと思っていた那岐は驚いた。
「君に渡したいものがある。 風早が君の生まれた記念日だから贈り物を何でも良いから用意して欲しいと言われていた」
「お…贈り物?」
「あの騒ぎはサザキが原因だろう。 いくら祝いの席と言っても、あの状況では君も大人しく祝いの主役に納まる事は出来ないと判断した。 だからすまないが、俺の部屋まで引き取りに来てくれるとありがたいんだが」
「別に…そんなの用意しなくても良かったのに」
ぽつりと那岐はつぶやく。
ただ自分の為に用意したと言われては邪険にも出来ないと、那岐は忍人に案内されるまま廊下を歩いて行った。
将軍の部屋と言ってもそう豪勢なものでもなく、若干部屋の広さはあるだろうが、他の皆とさほど差は無かった。
忍人が先に入ると「入ってくれ」と背中越しに那岐に声を掛けた。
躊躇しながらも那岐が部屋に入ると、忍人が蜀台に灯りをともした所だった。
「適当に座っていてくれ」
那岐は言われるまま、素直に腰を下ろす。
「祝いの席で渡すのが礼儀だとは思ったのだが、大きさがあるから後で渡そうと思っていたんだ」
そういって忍人が部屋の隅から持って来たものは、人の胴体程もある大きな膨れた布の袋だった。
「なんでそんなに大きいの?」
「君が喜びそうなものと言われ、考えた結果これになったのだが… やはり間違いだっただろうか」
忍人から受け取るとそれは、ぽふっという擬音が聞こえそうな程ふっくらした枕だった。
那岐は思わず両腕で抱きしめ、感触を確かめると、表布はもふもふとしていてとても気持ちいいものだった。
知らず顔が緩む。
「どうやらそれで良かったようだな」
他人に何か贈り物をする事など慣れておらず不安だったが、那岐の様子から気に入った様だと、忍人は安堵した。
暫く枕を抱きしめて感触を楽しんでいた那岐だったが、そっと枕を床に置いた。
「やっぱり… 受け取れないよ」
「どうしてだ?」
「僕には誕生日なんか祝ってもらえる資格がないんだ。 生まれた事を歓迎されず捨てられたんだから」
伏せ目がちに、独白する様に忍人に語る。
捨てられた忌子には、生まれた意味も存在理由も生きる目的もないと。
忍人は那岐の正面に膝を立てると、幼子をあやす様に頭を優しく撫でる。
「多くの者は生まれてから、一生かかろうが自分のなすべきものを、歩む道を見付けていくものだ。 君がなすべき事はこれから見付ければいい。 それだけの話だ」
「僕には…なにも出来る事はないよ。 与えられる事に甘えて依存して生きて来た僕には…」
「ならば、誕生した日ではなく、君が自分の道を歩き始めると決めた日とすればいい」
淡々と抑揚の無い様な声で忍人は言う。
「なんでそうやって答えを簡単に言うんだよ…」
「…俺は自分の思った通りの事を口にしただけなんだが… 気を悪くしたか?」
ちらりと忍人の顔を覗き込む。
「そんなキョトンとした顔、初めて見た」
「君が笑う顔もな」
逆にからかわれ、那岐は赤面する。
「忍人は凄いよ」
「凄くなどない。 俺よりも優れた者は多く居る。 ただ俺は多くの者の役に立てる様なりたいと、ただそれだけを自分に誓って生きているだけだ」
「やっぱり凄いよ。 僕よりもずっと強い」
「君にはまだ強くなれる機会が何度となく訪れるだろう。 辛くなったのなら、この枕を抱いて…」
「何?」
「あ、いや、辛くなったら今日皆が君の為に用意した贈り物を見て、やる気を取り戻せれば良いな」
「うん」
床に置いた枕を拾い上げると、那岐はきゅっと抱きしめた。
「ありがと」
「あぁ」
再び何度か頭を撫でると、那岐は落ち着くのか目をつむって暫く大人しく撫でられ続けた。
「今日はもう皆の前には出ず、部屋に戻った方が良いだろう」
「うん」
「部屋まで送ろう」
「うん」
最後のひと撫でに名残惜しむ様に頬をすり寄せた。


翌日の朝、那岐が忍人から貰った枕を抱きしめて、ゆらりゆらりと夢心地で起きると、部屋の中は大変な事になっていた。
いくつもの箱等が山積みになって部屋の出入り口が見えなくなっていた。
山の頂上を見上げると一つの竹簡に千尋の文字で、『皆からのプレゼント! 皆那岐の事思って用意してくれたんだから、全部開けなきゃ駄目だよ』と書かれていた。
全てを開けるのに半日はかかりそうだった。 早く片付けないと朝食には辿り着けないだろう。
「皆、ホントお節介だよな」
那岐はくすりと笑い、両腕にある枕に顔を埋めると、ふわりと忍人の部屋の香りがした。
誕生日がこんなに嬉しいものだと那岐は初めて思った。
この気持ちを皆に返すのは照れるが、どう返えせば良いか考えた。

終わり

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