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那岐誕生日SS その1です。

全部書き終わったらSSページに格納はします。
とりあえず読みにくいですが…

僕は毎年この時期が大嫌いだった。
風早と千尋が僕の誕生日を祝うからだ。
クリームと苺が沢山デコレーションしてあるケーキを買ってきて、誕生日プレゼントだと言って二人から綺麗にラッピングされたプレゼントを渡される。
生まれた理由のない僕にとって誕生日はありがた迷惑の、ただの毎日の延長に過ぎない出来事だった。
僕にとって『誕生日』に特別な意味なんかない。


「千尋もしつこいよ」
「だって、誕生会は毎年やってたし…」
「盛り上がってたのは千尋と風早だけだろう? そもそもこっちに誕生会なんて概念無いんだから、別にやる必要性は余計無いと思うけどね」
「もーっ!」
ドライな那岐に反してやる気満々だった千尋は、両頬をぷーと膨らませて抗議した。
「何を言っても無駄。 勝手にやっても僕は絶対に参加なんかしないからな」
千尋の額をこついて釘を刺す。
「那岐のバカー!」
「バカで結構」
背を向けたまま、左手をひらひらを振りながら、那岐はスタスタとどこかへ行ってしまった。
追いかけた所で余計那岐を怒らせるだけだと解っている千尋は、那岐を追いかける事はしなかった。

部屋に戻った那岐は寝台に倒れ込むと、枕を引き寄せ顔を埋める。
そして、深いため息を枕に吹きこむ。
(絶対お節介は風早譲りだ)
風早と千尋が嫌いな訳ではない。 天鳥船に居る皆の事も特別嫌いな訳ではないが、自分が目立つ事を嫌っていた。
那岐はまだ師匠と過ごしていた幼い頃の事を思い出しながら、いつの間にか眠りに落ちていた。
(あの頃に誕生日なんてあったら、師匠はきっと一生懸命何かプレゼントを考えてくれたりしたのかな…)
決して楽ではなかった日々の生活でも、師匠だけは那岐の事を誰よりも考えてくれていた、ささやかな幸せ。
もう二度とそんな幸せは手に入らないと解っているから、自分以外の他人とは距離をとる様になっていた。
たった五年。 まだ17歳という年齢には悲しい想いを抱いた月日。


おやつの時間になり、カリガネが持ってきたお菓子を囲み、『那岐の誕生日会・作戦会議』が始まった。
「どうしてもやるんですか? 千尋」
「やる! 絶対やる! だって、毎年那岐はあぁだけど、プレゼントだけはちゃんと受け取ってくれるもの。 だから…」
「そうですね、那岐は素直じゃない所がありますからね。 去年も翌日にはちゃんと残りのケーキも食べてくれましたし」
「無理強いはしたくないから、少人数でやりたいの」
「解りました。 メンバーは千尋に俺、先生と…」
風早が指折り参加者をカウントしていると、サザキの賑やかな声が割り込んできた。
「おう! 姫さん達、何か楽しそうな事企んでんな」
「サザキも那岐の誕生日会に参加しますか?」
「誕生日会?」
なんだそりゃ?と首をひねるサザキに、風早は簡潔に説明をする。
「料理はもうカリガネに頼んであるの」
「カリガネかー、そりゃ楽しみだな」
御馳走を思い浮かべ口の端から涎を垂らすサザキに、千尋は那岐は多分喜んで来てはくれないかも知れないけどと、苦笑いで告げた。
「主役の居ない宴会なんて、意味無ぇだろ。 俺が連れて来てやるよ」
「無理に連れてくれば怒って暫く口も聞いてもらえなくなりますから、気を付けて下さいね」
「このサザキ様に任せておけって!」
こうして『那岐の誕生日会・作戦会議』はモリモリと企てられていった。


何も知らない那岐は、夕食の美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐられ、空腹を自覚し目が覚めた。
ゆっくりと起き上がると、まだ眠気の残る頭を甲高い大声が貫いた。
「なーぎー!」
部屋の入り口いっぱいに翼を広げ無駄にテンションの高いサザキが、部屋にずかずかと入って来ていた。
あまりにも突然の出来事に那岐の思考は混乱する。
「主役が居ねぇと宴会も始まらないってもんよ。 ほらほら、さっさと起きた起きた」
そう言うとサザキは那岐の片腕を掴み、強引に宴会場もとい那岐の誕生日会会場へと連れて行こうと歩き始める。
「ちょっと待てよ!」
「待たねぇよ! 美味しいメシ食いっぱぐれちまうだろ」
「誰もあんたの都合なんて聞いてないよ! 離せって!」
ぐいぐいとサザキに引っ張られる腕に痛む。 こういう時に体格の差ってやつが恨めしいと那岐は唇を噛んだ。
誕生日会の会場はいつも岩長姫やサザキ達の宴会が行われる天鳥船の一室で、扉を開けると風早が声を掛けたメンバーがほぼ集まっていた。
「今日の主役連れて来たぜー」
意気揚々と皆の前に那岐を押し出した。
少人数とは言え八葉の面々や岩長姫にカリガネもおり、皆の中心には料理と誕生日ケーキと思われる飾り付けのさせれた菓子があった。
まるで騙された様な状況に那岐は憤慨した。
「こんな無理矢理連れて来て祝われて誰が嬉しいって?」
皆、那岐の様子からサザキが説明もろくにせず強引に連れて来たのだと理解し、一様に「あちゃーっ」という顔をした。
「那岐、あのね…」
千尋が那岐をなだめようとしたが、こうなった那岐は誰の話にも耳を貸そうとはしない。
「部屋に帰る」
千尋の制止を振り払い、部屋から出て行こうとする那岐をサザキは気に入らなかった様で、翼を大きく広げ出入り口を封鎖した。
「何だよ、皆お前の為に宴会してやろうって言ってんだろー」
「”してやろう”? そんな偽善こっちから願い下げだね」
二人の言い争いがどんどんヒートアップしそうな雰囲気に、風早達はハラハラと見守っていた。
言い返そうとするサザキの耳に、地の底から響くような声音が届いた。
「何をしている」
殺気にも似た声音に、サザキの背中がピシッと伸びた。
ゆっくりと振り返ると眉間にしわを寄せた忍人が立っていた。
「風早に呼び出されてみればこの騒ぎ。一体どういう事だ」
「いい…いや、あの」
サザキの背後に視線をずらし、盗み見た那岐や風早達の顔から大体の事情を察した忍人は、大きくため息をついた。
―瞬間―
サザキの鼻先すれすれに忍人の双剣が閃光を描き、場が一気に凍りついた。
「この場は俺が預かる。 文句はないな?」
サザキは硬直し、無言でコクコクと何度も頭を上下させ、了承の合図を送った。
その様子を確認すると忍人は剣をさやに収め、那岐の手をとり宴会場から去った。

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